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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

魔法の壺

魔法の壺

「マア、ゆっくり聞いて呉れ給え。実は僕は初代さんなり深山木氏なりの敵討ちに、君に御手伝いして、犯人探しをやってもいいとさえ思っているのだから、僕の考をすっかり順序立てて話をして、君の意見を聞こうじゃないですか。何も僕の推察が動かすことの出来ぬ結論だという訳じゃないんだから」

諸戸は私の矢つぎ早やな質問を押えて、彼の専門の学術上の講演でもする様な調子で、誠に順序正しく彼の話を続けるのであった。

「僕も無論その点は、あとから近所の人に聞合わせてよく知っている。古道具屋の主人なり弥次馬なりの目をかすめて犯人が逃去ったと考えることは出来ない様な状態でした。古道具屋の戸締りが開けられた時には、已に近所の人達が往来に集っていた。だから、仮令犯人が縁の下を通って古道具屋の台所の上げ板から、そこの店の間なり裏口なりへ達したとしても、主人夫妻や弥次馬達に見とがめられずに戸外へ出ることは、全く不可能だったのです。彼はこの難関をどうして通過することが出来たか。僕の素人探偵はそこでハタと行詰ってしまった。何かトリックがある。台所の上げ板に類した、人の気づかぬ偽瞞があるに相違ない。