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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

生地獄

畜生だ。身体と同じに心まで曲りくねっているんだ。

蓑浦君、これが僕の親の正体だ。僕は奴等の子だ。人殺しよりも幾層倍も残酷なことを、一生の念願にしている悪魔の子なのだ。僕はどうすればいいのだ。悲しむのか。だが悲しむには余りに大きな悲しみだ。怒るのか。だが怒るには余りに深い憎みだ。

本当のことを云うとね。この穴の中で道しるべの糸を見失った時、僕は心の隅でホッと重荷を卸した様に感じた。もう永久にこの暗闇から出なくてすむかと思うと、いっそ嬉しかった」

諸戸はガタガタ震える両手で、私の肩を力一杯抱きしめて、夢中に喋り続けた。しっかりと押しつけ合った頬に、彼の涙がしとど降りそそいだ。

余りの異常事に、批判力を失った私は、諸戸の為すがままに任せて、じっと身を縮めている外はなかった。

生地獄

私は尋ねたくてウズウズする一事があった。だが、自分のことばかり考えている様に思われるのがいやだったから、暫く諸戸の昂奮の鎮まるのを待った。

私達は闇の中で、抱き合ったまま、黙り込んでいた。

「馬鹿だね、僕は。この地下の別世界には、親もないし、道徳も羞恥もなかった筈だね。今更ら昂奮して見た所で、始まらぬことだ」