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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
乃木将軍の秘密
何者かが、開いてあった窓の外の暗闇から、少年を沈黙させる為に発砲したのである。云うまでもなく友之助の告白によって危険を感じる者の仕業であろう。ひょっとしたら、友之助の所謂「お父つぁん」であったかも知れない。
「警察へ知らせよう」
諸戸はそこへ気がつくと、いきなり部屋を飛出して行ったが、やがて彼の書斎から、附近の警察署を呼び出す電話の声が聞えて来た。
それを聞きながら、私は元の場所に立ちつくして、ふとさっきここへ来る時見かけた、無気味な、腰の所で二つに折れた様な老人の姿を思い出していた。
乃木将軍の秘密
何者かは知らねど、相手が飛道具を持っていて、しかもそれが単なるおどかしでないことが分っていたものだから、私達は犯人を追跡するどころか、私も書生も婆やも、青くなってその部屋を逃げ出し、期せずして警察へ電話をかけている諸戸の書斎へ集ってしまった。
併し諸戸丈けは、比較的勇敢であって、電話をかけ終ると、玄関の方へ走って行って、大声で書生の名を呼び、提灯をつけてこいと命じた。そうなると、私もじっとしている訳にも行かず、書生を手伝って、提灯を二つ用意し、已に門の外へかけ出している諸戸のあとを追ったが、闇夜の為見通しがつかぬので、犯人がどちらへ逃げ去ったのか、全く分らない。