轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
諸戸屋敷
すると、足音で気づいたのか、海の方を見ていた老翁が、ゆっくりゆっくり首をねじまげて、私達を見返した。そして、老翁の視線が諸戸の顔にたどりつくと、そこでピッタリ止って、動かなくなってしまった。老翁はいつまでもいつまでも、穴のあくほど諸戸を見つめていた。
「変だな、誰だろう。思い出せない。きっと僕を知っている奴だよ」
一町もこちらへ来てから、諸戸は老翁の方を振返りながら云った。
「傴僂ではなかった様だね」
私は怖々それを云って見た。
「僕の父のことかい。まさか、何年たった所で、父を見忘れはしないよ。ハハハハハハ」
諸戸は皮肉な調子で低く笑うのだった。
諸戸屋敷
近寄ると、諸戸屋敷の荒廃の有様は、一層甚しいものであった。くずれた土塀、朽ちた門、それを這入ると、境もなくてすぐ裏庭が見えているのだが、不思議千万なことには、その庭が、まるで耕した様に、一面に掘り返されて、少しばかりの樹木も、あるものは倒れ、あるものは根こそぎにして放り出してあるといった塩梅で、目も当てられぬ乱脈であった。それが屋敷全体の感じを、実際以上に荒れすさんだものに見せていた。
怪物の真黒な口みたいに見える玄関に立って、案内を乞うと、暫くは何のいらえもなかったが、再三声をかけている内に、奥の方から、ヨタヨタと一人の老婆が出て来た。