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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
刑事来る
若しやひどい目に合わされているのじゃないだろうか」
その実私は、ただ恋人秀ちゃんの安否を気遣っていたのだ。
「もう、この麻縄があるんだから、外へ出るのは訳はない。兎も角一度様子を見に帰ろう」
道雄の指図で、気違い親爺の見張番には徳さんを残して置いて、私達はしるべの縄を伝って、走る様に出口に向った。
刑事来る
私達は無事に井戸を出ることが出来た。久し振りの日光に、目がくらみ相になるのを、こらえこらえ、手を取り合って諸戸屋敷の表門の方へ走って行くと、向から見馴れぬ洋服紳士がやってくるのにぶつかった。
「オイ、君達は何だね」
その男は私達を見ると、横柄な調子で呼び止めた。
「君は一体誰です。この島の人じゃない様だが」
道雄が反対に聞返した。
「僕は警察のものだ。この家を取調べにやって来たのだ。君達はこのうちと関係があるのかね」
洋服紳士は思いがけぬ刑事巡査であった。丁度幸である。私達は銘々名を名乗った。
「嘘を云い給え。諸戸、蓑浦の両人がここへ来ていることは知っている。だが、君達の様な老人ではない筈だよ」
刑事は妙なことを云った。私達をとらえて「君達の様な老人」とは一体何を勘違いしているのだろう。