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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

狂える悪魔

アア、何だかそんな気がしてならぬ。若し初代さんの霊にそれ程の力があるのだったら我々の宝探しも首尾よく目的を果すかも知れない。そして、この地下の迷路を抜出して、再び秀ちゃんに逢う時が来るかも知れない。

「初代さん、初代さん、どうか私達を守って下さい」

私は心の中の懐しい彼女の俤に祈った。

狂える悪魔

それから又、地獄巡りの悩ましい旅が始まった。蟹の生肉に餓をしのぎ、洞窟の天井から滴り落ちる僅かの清水に渇を癒して、何十時間、私達は果しもしらぬ迷路の旅を続けた。その間の苦痛恐怖色々あれど、余り管々しければ凡て省く。

地底には夜も昼もなかったけれど、私達は疲労に耐えられなくなると、岩の床に横わって睡った。その幾度目かの眠りから目覚めた時、徳さんが頓狂に叫び立てた。

「紐がある。紐がある。お前さん達が見失ったという麻縄は、これじゃないかね」

私達は思いがけぬ吉報に狂喜して、徳さんの側へ這い寄ってさぐって見ると、確かに麻縄だ。それでは、私達はもう入口間近かに来ているのであろうか。

「違うよ、これは僕達が使った麻縄ではないよ。蓑浦君、君はどう思う。僕達のはこんなに太くなかったね」