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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

少年軽業師

海岸にいたと同じ子供かどうかも、ハッキリは分っていないのです。丁度幸だ。君と二人でこれから調べて見ようではありませんか。君ならあの時の子供の顔を見覚えているだろうから。それに、この花瓶の中へ這入れるかどうかを、実際にためして見ることも出来ますしね」

語り終って諸戸は立ち上った。私を伴って食堂へ行く為である。諸戸の探偵談は、この世にあり相もない、洵に異様な結論に到達したのであったが、併し、私は非常に複雑でいながら、実に秩序整然たる彼の長談義に、すっかり堪能した形で、今は最早や異議を挟む元気も失せていた。私達は小さいお客さまを見る為に、椅子を離れて、廊下へと出て行った。

少年軽業師

私は一目見て、それが、鎌倉の海岸にいた子供の一人であることを感じた。そのことを諸戸に合図すると、彼は満足らしく肯いて、子供のそばへ腰を卸した。私も食卓をはさんで席についた。丁度その時、子供は食事を終えて書生に絵雑誌を見せて貰っていたが、私達に気がつくと、ただニヤニヤ笑って、私達の顔を眺めた。薄汚れた小倉の水兵服を着て、何か口をもぐもぐさせている。一見白痴の様に見えてその奥底に何とも云えぬ陰険な相がある。