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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

意外な素人探偵

それから、彼はなおも、私に食堂へ行くことを勧めたが、私が固辞するので、彼はあきらめて例の書生を呼び出してこんなことを命じた。

「食堂にいるお客さんにね、ごはんをたべさせて、退屈しない様に、君と婆やとで、よくお守りをしてくれ給え。帰るなんて云い出すと困るからね。何かおもちゃがなかったかしら。……ア、それから、このお客さまにお茶を持ってくるのだ」

書生が去ると、彼は強いて作った様な笑顔で、私の方に向き直った。その間に、私は部屋の一方の隅に置いてあった問題の七宝の花瓶に気づいて、こんな場所にそれを放り出して置く彼の大胆さに、いささか呆れた。

「立派な花瓶ですね。あれ、僕どこかで一度見た様な気がするんですが」

私は諸戸の表情に注意しながら尋ねた。

「アア、あれですか。見たかも知れませんよ。初代さんの家の隣の道具屋で買って来たんだから」

彼は驚くべき平静さで答えた。それを聞くと私は一寸太刀打ちが出来ない気がして、やや心臆するを覚えた。

意外な素人探偵

「僕は逢いたかったのですよ。久しく君と打ちとけて話をしないんだもの」諸戸は酔にまぎらせて、少しく甘い言葉遣いをした。