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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
三度とも同じことなのよ。私が格子を開けると、何だかハッとした様に、姿勢を変えて、何食わぬ顔で通過ぎてしまうのですけれど、でも、その瞬間まで、じっと窓の所から、家の中の様子を窺っていたらしいそぶりですの。二度目までは、私の気のせいかも知れないと思ってましたけれど、昨夜又それなんでしょう。決して偶然な通りすがりの人じゃありませんわ。と云って御近所にあんなお爺さんは見たこともないし、私何だか悪い事の前兆の様な気がして、気味が悪くて仕様がないのよ」
私が危く笑い相になるのを見ると、彼女はやっきとなって続けるのだ。
「それが普通のお爺さんじゃないのよ。私あんな不気味なお爺さんて、見たことがありませんわ。年も五十や六十じゃなさそうなの。どうしたって八十以上のお爺さんよ。まるで背中の所で二つに折れたみたいに、腰が曲っていて、歩くにも、杖にすがって、鍵のように折れ曲って、首だけで向うを見て歩くのよ。だから遠くから見ると、背の高さが、普通の大人の半分位に見えますの。何だか気味の悪い虫が這ってでもいる様なの。そして、その顔と云ったら、皺だらけで、目立たなくなっていますけれど、あれじゃ若い時分だって、普通の顔じゃないわ。