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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
四十
「ああ、可いともね、また礼なんぞいわせるようなお方じゃありません。」
「トおっしゃる! へへへへ、おかみさん、厭に肩を持ちますね、いくらか貰ったね。」
「貰いましたともさ、貰ったどころじゃない、お嬢さんだって、私だって、九死一生な処を助けて下すった方ですもの、」
「九死一生、」
お嬢さんと聞いたばかりでもう眼を据え、
「煩ったかね。もっとも肝の虫が強いからね、あれが病だ。」
「しかもお前さん、大道だったろうじゃありませんか。」
「大道で、何が大道で、ここあお嬢さんの内じゃねえかね。」
「いいえさ、こちらへおいでなさらない前にさ、屑屋をしていらっした時の事ですよ。」
「屑屋? 誰が、こう情ねえ、人間さがりたくねえもんだ。こんななりはしてるがね、私あこれでも床屋ですぜ、屑屋は酷い、」といった。
四十
「誰がお前さんを屑屋だといいましたよ。御覧なさいな、そういわれてさえ腹を立つ、その、お前さん、屑屋をしておいでなすったんじゃないか、それだもの、」
変な面で、
「誰が、」
「お嬢さんのことをいってるんだよ、」
「はあ、問屋か。そう屑問屋か。道理こそ見倒しやがって。日本一のお嬢さんを妾なんぞにしやあがって、冥利を知れやい。