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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

四十三

「愛吉、おいでな、」

皆まで聞かず、上へ聞えたかと、「納豆、納豆。」

四十三

丹平は言を改め、

「さて、先生、何んでも愛の奴は、その中でも、お嬢さんが酷く差込んだというのを気にして、尋ねますから、婆さんが、その時だ。

一心不乱に蘭蝶を、語り済ましている内に、うむといってお夏さんが苦しみ出したんだそうで。いや、驚くまい事か、糸も撥も投り出して、縋りついて介抱をしたんだけれども、歯を切緊ってしまったから、遊女の空癪を扱うようなわけには行かない。

自分も打坐り込んで、意気地はがあせん、お念仏を唱え出した。

ト珍らしく人声がして、俥が来たでさ。しかも路が悪いんで、下町の抱車夫にゃあがきが取れなかったものと見えてね、下りて歩行いて来かかった。夜目にも立派な洋服で、背は高くないが、極り処のきちんとした、上手が鑿で刻んだという灰色の姿。月明に一目見ると、ずッと寄ったのが山の井さんで、もう立向うと病魔辟易。病人を包んだ空気が何となく溌とひらくという国手だから、もう大丈夫。――

やがてお夏さんの望みで、名が良いという今の青柳町へ、世話をする事になったに就いて、その時の縁で、お賤が、女中、乳母、兼帯のおもり役。