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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

とここまで……愛吉にお賤が言って聞かせて、見なさい、そういう御恩人だ、といっても、奴泡を吹いて、ブウブウの舌を引込ませない。

日本一のお嬢さんを妾にするたあ何事だ、妾は癪だ、恩人も糸瓜もねえ、弱り目につけ込んで、すけべいの恩を売る奴は、さし込み以上の疫病神だと、怒鳴るでがしょう。

一体何という藪だ、破竹か、孟宗か、寒竹か、あたまから火をつけて蒸焼にして噛ると、ちと乱だ。楊枝でも噛むことか、割箸を横啣えとやりゃあがって、喰い裂いちゃ吐出しまさ。

大概のことは気にもかけなかったが、婆さん貧病は治して貰った、我が朝の、耆婆扁鵲と思う人を、藪はちと気になったから、山の井さんを何だ、と思うと極めるとね。

先刻承知だろうと思っていたのが、耳を立てて、何山の井だ、どこの藪だ。

光起さんとおっしゃって、日本橋の真中にある大藪、というと、(やや先生か)といって、愛吉が、呆気に取られて、しばらく天井を視めていたそうだッけ。

(親分か、)と吹ッ切った。それで静まるのかと思うとそうでない。

(あン畜生、根生いの江戸ッ児の癖にしやがって、卑劣な謀叛を企てたな。こっちあ、たかだか恩を売って、人情を買う奴だ、贅六店の爺番頭か、三河万歳の株主だと思うから、むてえ癪に障っても、熱湯は可哀相だと我慢をした。