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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
何とももって残念千万。
や、梅岡さんの方が前へ行ったそうでがす。あの石段の上の床几、入口のね、あすこだ。毛氈を敷いて出してあるのに腰をかけて、待合わしていたんでがすな。
そこへ柳橋とも、芳町とも、新橋とも、たとえようのないのが、急いで来て、一所になった。紅葉の時だが、マビで、そんなにたて込まず、座敷もあいていたけれども、上らないで、男はカラカラと高談話。
一室だとたちぎぎがしたいなぞと、気を揉んだ女中が居たそうで、茶代が五十銭。
それから連れ立って、東照宮の方へ行くのを、大勢女中がずらりとならんで騒いで見送ったのは、今しがただ、といって、三宜亭の主人がな。
奥座敷を閉め込んで、血だらけのコオトを脱がした時、目を眠っているお夏さんの、艶麗なのを見て、こりゃ、薬や繃帯をなさるより、真綿で包んで密として置く方が可いッて、真面目にいった。
もっとも夢のようだといいましたっけ。
先生、私なども、真と思わん、どうしても夢でがすよ、それが一昨々日の晩だ。」
といって歎息した。
金之助は悩める右手をひしと抱いて、
「私は却って、その顔も見ないから、ちっとも夢のように思われんでなお困る。