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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

蓬頭垢面、窮鬼のごとき壮佼あり、

「先生!」

と叫んで遠山の胸に縋りついた。

「お嬢さんお嬢さん、貴女が兄さんのようだとおいいなすった、新聞社の先生ですよ。」と、いまだ全くその気は狂い果てなかった。

金之助、声高く、

「貴女のしたことは決して間違った事じゃありません!」

これに頷く趣に見えたが、

「もう死んでも可ごさんす、」といって、起上ろうとするのをかの看護婦が、密と抱いて、

「いえ、私が死なせません。」

渠は窈窕たる佳人であった。この窈窕たる佳人は、山の井医学士の夫人定子であることを――ここで謂おう。

医学士は衝と進んで、打まかせたような、お夏の右手の脈を衝と取った。

除けよ、とあるので、附添と、愛吉は、山を崩すがごとく、氷嚢を取り棄てた。医学士は疾病の他に、情の炎の人の身を焼き亡うことのあるを知ったであろう。

丹平は、そこに掲げられた、体温の表を見て、烈しい地震系を描いた、噴火山のようなものだと思った。

あわれ、その胸にかけたる繃帯は、ほぐれて靉靆いて、一朶の細き霞の布、暁方の雨上りに、疵はいえていたお夏と放れて、眠れるごとき姿を残して、揺曳して、空に消えた。