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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

集っていたのは、バラバラと散る。

(遁げるかッ。)

で、鍍金の奴が飛びつくと、

(べらぼうめ、いくら山手だってこう、赤城に芝居小屋のあった時分じゃねえ、見物の居る前で生命の取遣りが出来るかい、向う崖の原ッ場までついて来い、殺してやる、来い!)

というと前へ立って駆け出したんで、皆がぞろぞろとついて行くと、鍍金の奴は一足おくれで、そのあとへ、こけ勘。

ところがね、おかみさん、いざ原場の頂上へ薄りと火柱が立って、愛吉の姿があらわれたとなる。と、こけ勘はいきせい切って追いあがりましたが、遠巻にした見物も、二人の徒も、いくら待っても鍍金が来なかったというじゃありませんか。

その筈でさ、来ないも道理。どさくさ紛れに、火の玉の身上をふるった、新しいばりかんを二挺、櫛が三枚、得物に持った剃刀をそのまま、おまけに、あわせ砥まで引攫って遁亡なんですって。……

類は友だっていいますがね、此奴の方が華表かずが多いだけに、火の玉の奴ア脊負なげを食って、消壺へジュウー……へへへ、いい様じゃありませんか、お互です。」

女房怪しからず、と剃った痕に皺のまじった眉を顰め、

「お互ッて、じゃ今来た愛吉ッてのもちょいちょい盗るの。