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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

十七

「じゃ、親方、」

「む、」

と取ったが、繻子張のふくれたの。ぐいと胴中を一つ結えて、白の鞐で留めたのは、古寺で貸す時雨の傘より、当時はこれが化けそうである。

愛吉は、握太な柄を取って、べそを掻いた口許を上へ反らして、

「こりゃ、酷いや、」

「おや、お世話様でございますね。」

と女房は格子を開け、

「貴女、お帰んなさいまし。」

「ああ、ただいま、」といいながら帯をぎゅうと取出した。

小菊の中の紅は、買って帰った鬼灯ならぬ緋塩瀬の紙入で。

可愛き銀貨を定めの賃。

「御苦労様。」

「お持ちなすったものはこれッきりかね。」

「や、まだ台函に、お包が、」とすッ飛んで取りに駆けたは、火の玉小僧の風体に大分怯えているらしい。

「酷いや、お嬢様、見っともねえや。こんなものをさして歩行いて、こりゃ、貴女ンですかい。」

「可いじゃないか。」

と莞爾したが、勝山の世盛には、団扇車で侍女が、その湯上りの霞を払った簪の花の撫子の露を厭う日覆には、よその見る目もあわれであった。

十七

「いえ、そりゃ、あの私ンでございますよ、ほほほほ、」

と女房も寂しい微笑。

愛吉心着いて其方を見向き、

「ええ、さようで。