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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

へへへへへ、先刻はどうも、」

とそれもこれも弱った顔色。

お夏は耳敏く聞きつけて、

「おや、さっきも来たの。」

女房のいらえぬ前、慌てて調子高に愛吉はごまかす気、

「だって、お嬢様、見ッともないや、」

「可いよ。」

「日、日傘をさしてお歩行きなさいな、深張でなくってもです。」

「人が笑いますよ。」

「誰が? え、何奴が笑うんで、」

と、すぐにひらめく眉の稲妻。

お夏は真面目に、わざと澄ました顔で、

「威張ったって不可ません、」

「それだって、馬鹿ンつら。」

「でもさ、」

「何故、お嬢様、」

「笑う人はね、お前より強いんだもの。喧嘩をしたって負けますよ。」

といい得て、花やかに浅笑した。お夏さん残らず、御存じ。

女房思わず吹き出して、

「ほほほほほ、」

狐床の火の玉小僧、馬琴の所謂、きはだを甞めたる唖のごとく、喟然として不言。ちょうど車夫が唐縮緬の風呂敷包を持って来たから、黙って引手繰るように取った。

「さあ、お入りな。」

後姿でお夏は格子を、

「おばさん、緩りだったでしょう、」

女房が前へ立って、

「お疾うございましたこと、何は、あの此間から行って見たいッて、おっしゃってでした、俤橋、海晏寺や滝の川より見事だッて評判の、大塚の関戸のお邸とやらのもみじの方は、お廻りなすっていらっしゃいましたか。