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しきぶこうじ
式部小路
泉 鏡花
「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页
またもうお目にかかるまいと心じゃ極めていたんですから、口へ出して人に聞くのも何だか気が咎めてならねえんで、尋ねるわけにもなりませんで、程たって、勝山さんの御新造が築地の何とかいう病院で、お亡なんなすったって、風のたよりに聞きましたが、ともかくも病院へお入んなさるくらいじゃ、立派にお暮しなさるんだろう。お嬢さんは、お手車か、それとも馬車かと考えますのが一式の心ゆかしで、こっちあ蚯蚓みたように、芥溜をのたくッていましたんで。
へい、決してその、決して何でさ、忘れたんじゃありません。」
語って涙を拭う時、お夏ははんけちを啣えていた。
「じゃ何、あの晩火事の時、火の中へ飛び込んだの、大変ねえ。」
「へ、何、そりゃ、そんな事はわけなしでさ。熟と大人しくしている時が堪らねえんで。火でも水でも、ドンと来た時はおもしれえんで。へ、何、わけなしでさ。殊にお嬢さん許の灰になりゃ、私あ本望だったんです。」と、思わず拳を握ったのである。
お夏は黙って瞻った。その時はじめておくれ毛がはらはらと眉を掠めた。
「でもお前、目をまわしたとおいいじゃないか。」
「ちょっと、眠ったんで、時々でさ。