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しきぶこうじ

式部小路

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1906(明治39)年1月1日~1月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 74,847 字 · 149 页

青空文庫

四

はッと急いたか、瞼を染めた、気の毒なが色に出て、ただ、涼しい声で、

「はい、」といった。

「お差支はないでしょうか。」と、少しずつ顔を擡げる。

「御免なさいな、私は、あの、この家のものじゃないんですよ。」

「へ、何、お邸のお嬢様ではいらっしゃいません?」

「貴下、不可いんですかねえ、私もやっぱり見に来たものなの。」

小男は胸を反らして笑い、

「成程、御夥間ですかい。はははは、可うございましょうとも。まあ、お掛けなさいまし。何ね、愚図々々いや今の口上で追払いまさ。貴女がお嬢様でも、どうです、あれじゃ厭とはいえますまい。」

「そう、ほんとうにお上手ね、」と莞爾した。

ちとこの返事は意外だったか、熟と瞻ってて、

「や、」帽子の下で膝をはたり。

「人形町においでなすった、――柳屋のお夏さん。」

四

「今日は、今日ア、」

かみさんが、

「ああい、」といって、上框の障子を閉め、直ぐその足で台所へ、

「誰? おや、床屋さん、」

「へへへへへ、どうも晩くなりまして済みません、親方がそう申しました、ええ、何だもんですから、つい、客がございましたもんですから、」

袷の上に白の筒袖、仕事着の若いもの。