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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「ふウむ……」と、長官は苦笑して、「なかなかその知事もやっとるな。よほどな色男だと見える。……しかし何か。君はその雷横の親孝行に感じて、わざと逃がしてやったというのか」

「いえいえ。そんなわけではありません。まったく、役目の落度です、油断からです」

「そうではあるまい。友情だろう。まア何しても、さしたる重罪ではなし、七年間はわしの邸に仕えていろ」

「は。こんなことなら、どうか一生でも」

「はははは。うい奴だ。ま一杯飲め」

ところへ、チョコチョコと、唐子人形みたいな愛くるしい四ツばかりな男の子が入って来て、そこらで悪戯していたと思うと、朱同の髯が童心の好奇をそそったものとみえる。ひょいと、朱同の膝へ乗って、その長やかな黒髯を、おもしろそうに弄びはじめた。

「長官。お孫さんでございますか」

「ばかをいッちゃいかんよ。わしだってまだ若い。わしの末子だ」

「それは、それは。……ア痛。お坊っちゃま、そんな引ッ張ると、この小父ちゃんが泣き出しますよ」

子供はよく大人を観る。さあこれからというもの、この唐子は、おヒゲの小父ちゃんを見かけると、彼のあとを追っかけ廻して離れない。