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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
――それをもって宋江を助けてやれ。また民ぐさを力づけ、世の道をただせ」
「は。必ず、お教えを忘れぬようにいたしまする」
「そもそも、汝の宿命は、天にあっては天間星。地にあっては草華の露。人と人との間に情けをこぼす性のものだ。しかし世はまだ溟々の混沌時代。まことの世造りと人拵えの成るまでには、なお五千年もかかるだろう。それまでは地上の人間も鬼畜の業を脱しえず、殺し合い、憎しみ合い、悪と悪との血みどろを這い廻るのもぜひないとするしかない――。それゆえ、今生一生の業ではしょせんおぼつかないが、今も暗溟の世造り時期。そうこころえて汝も修羅へ行くがいい。くれぐれ、人欲に迷うなよ。あやまるなよ」
こう、ねんごろな諭しをうけて、次の日早朝、一清公孫勝は母にわかれ、旅の支度もそこそこ、戴宗と共に、二仙山を降りた。
このさい、李逵はどうしたのか、前の晩からいなくなってしまった。戴宗が不審がってたずねると、一清は事もなげに笑って答えた。
「なあに、ご心配にはおよびません。たぶん羅真人に可愛がられて、当分、紫虚観に居れと、止めおかれてしまったものでございましょう。……あの天殺星に修行を積ませ、もすこし撓めておかねばならんという思し召しから。