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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
だから妙におとなしくなり、また李逵に似げなく、その話だとはにかんでいた。
しかし彼は、帰る途中で、一人の奇異な男を知って連れもどっている。顔ばかりでなく体じゅうに菊石のある銭豹子という鍛冶屋さんだ。
もとより銭豹子は本名ではない。苗字は湯、名は隆、つまり湯隆という者で、父はもと延安府の軍寨長官だったそうだが、軍人の子にもやくざは多い。ばくち、女、かたのごとく流れ流れてきたすえ、武岡鎮の町はずれで、テンカンテンカンやっているところを、こんど通りがかりの李逵と知って、
「ぜひおれも梁山泊へ入れてくれ」
とばかり一しょにここの戦場先へ来たものだった。見るからに一ト癖もふた癖もあるが、たしかにまた一芸の士。呉用、宋江のめがねでも「よかろう」となって、さっそく今日は戦陣に加わっていた。とはいえ到底、李逵のそばにはついて歩けない。李逵もまた、新米の味方の一人など、ふり返ってもいなかった。
いやここでは、李逵を語るよりは、奉行高廉の行動を見ておかねばなるまい。――高廉は望楼から下りるまでもなく、脚下いちめん殺戮の坩堝を見、城中に入った敵の奇功を察し、もうこれまでと観念の目をふさいでいた。