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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
よろしく即時ご追放あッてしかるびょう存じまする」
「まあ、まあ。そういわんで、こんどだけは慈悲の眼で見てやれんかのう」と、智真長老は慰撫一方のていで努めていう。
「――大檀家の趙大人のお顔もあることじゃし、明日ともなれば、わしから智深にきびしく諭戒を加えて、以後きっと、慎ませようで」
囂々たる不平はたいへんなものだったが、長老の鶴の一と声。ぶつぶつ引き退がるしかなかった。
翌朝。――智深はむっくり起きに、蔵堂裏の竹林へ出て、こころよげに放尿していた。そこへ上人のお召しときたので、彼は大慌てに後へついていき、畏る畏るその座下にうずくまった。
「これっ智深。おまえはどうも困ったやつ。察するに病持ちだな」
「いいえ、体はこの通り人一倍丈夫ですが」
「何をいうぞ忘れッぽいという一病があると申すのじゃ。得度のさい授けた五つの戒と、三帰を忘れたの」
「あ。病とはそのことで」
「さればじゃ。昨夜の大酒乱行はそも何事ぞ。山門の清規を破って、あのざまは」
「もう、しません」
「きっとか。以後忘れないか」
「つつしみまする。はい。きっと、つつしみまする」
しおしおと、智深は禅床へ引き退がった。