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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

俺を忘れるッて法があるか。俺だって命は可愛いいんだぞ。ひでえや。宋先生も呉用軍師もここにいながら」

「まあまあ李逵、そう怒るな。おまえは人いちばい達者だから、つい安心されるのだ」

「どうせそうでしょうよ。柴大人のお命が黄金なら、俺なんざ、屑鉄だ。虫ケラ一匹とも見られていないにちげえねえ」

「ひがむな、黒旋風の名が泣くぞ」

「もう井戸の底で、さんざッ腹泣いちまッたい」

「わはははは。いや勘弁しろ勘弁しろ」

この日、柴進の療養に万全をつくす一方、城内の倉庫から山の如き財宝を取出させた。すべてこれは先に官へ没取された柴進と柴皇城家の物である。それを奪り返し、また併せて武具馬具などの分捕り品を二十余輛の車馬に積ませて、

「李逵、雷横、戴宗、公孫勝、そして新入りの湯隆の五名は、ひとまずこれを送って梁山泊へ帰れ」

と、あくる日、先発させた。

そのうえで、宋江と呉用とは、高唐州城の処理を終った。窮民には穀や物を施し、旧高廉の部下で、悪評の高い二、三を捕えて町中で斬に処し、また囚われていた柴家の眷族や、病人の柴進は、これを車仕立ての内にいたわり乗せて、やがて全軍をそろえ、凱歌をのこして、山東梁山泊の大寨へ、意気揚々ひきあげて行ったのだった。