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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
その人間臭い街のなま温いものに久々でくるまれながら、ぼんやり通り過ぎかけて、
「おっと。ここだっけ」
と、一軒の鍛冶屋の土場へのっそりと入った。
山上にまで、テンカン、テンカン、谺してきたのはここの鎚音と鉄台の響きにちがいない。手を休めた三人の鍛冶工は、鼻の穴から目ヤニまで炭にした真っ黒けな顔を揃えて、智深の姿を見まもった。いや見上げたというほうが当っている。
「やあ親方、こんちわ。……どうだね、極く質のいいはがねはあるかい」
「へえ、お坊さまに、はがねの御用がございますかね」
「ばかにするな。坊主とはがねと、無縁という法もあるまい。錫杖を一本鍛えてもらいたいんだ。ちょっと、手ごろのな」
「なるほど。ですがお坊ンさん、誂えちゃあお高くつきますぜ。出来合いじゃいかがです」
「ところがわが輩の手に合う出来合い物なんて見たことないので持たなかったのだ。ひとつ急いでこさえてくない。重サ百斤ほどなのを」
「冗談じゃない。百斤なんて錫杖は人間の持ち物にゃありませんぜ。三国時代の豪傑関羽さまの偃月刀だって八十一斤でさ」
「では、関羽公と同格の八十一斤としておこうか」
「へへへへ。