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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
工廠の鎚音は水泊に冴え、不死身の鉄軍も壊滅し去ること
「嘘かどうか、蓋を除ってごらんなせえ」
「あっ、なるほど空ッぽだ。中身のよろいはどこへやった! 隠しだてしやがると、素ッ首をねじ切るぞ」
「よろいはとうに泰安州へ行ってるさ。経略使のの旦那のご註文でね!」
「ご註文だと。ひとの物を」
「金じゃあ売らぬ宝と聞いて、の大旦那が李三ていう泥棒の名人にいいつけてお宅へ忍び込ませたのさ。俺アその手伝いとして張番にくッ付いていただけだ。おれが犯人じゃあねえよ」
「でも。何で空櫃だけをてめえ背負ってかえるのか」
「……この通り、逃げる途中で左の足首を挫いてしまい、李三の早足には追ッつけねえので、野郎が中身のよろいだけを持って、先に泰安州へ行っちまったというわけだ……。ア痛。……ちょっと曲げても足が痛む。……よろい櫃はそっちへ返すから、俺もここで押ッ放してくれ」
「待て。そうは問屋で卸さねえぞ。……弱ったなあ、隆さん、どうしよう?」
「そいつを証人にしょッ曳いて、泰安州へ乗り込もうじゃありませんか」
「そして」
「李三を捕ッつかまえる。もし李三が分らなかったら公沙汰にし、経略使のをあいてに訴訟するしか途はありますまい」
湯隆は頻りにすすめた。