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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

――そして、つくづくいうには、思うに、自分は祖先の業と財と徳を継いできたのみで、何の報徳もしていなかった。まことに不信心であった。

易者の言など、あてにならないかもしれない。しかし自分は発心した。ここから千里の外、巽の方角といえば、そこには、泰安州は東岳泰山の霊地がある。一に罪障の消滅を祈り、二に衆生のための浄財を喜捨し、三に、あきないがてらの見物もして廻りたいと思う。……で、李固はさっそく、山東向けの商品や旅の荷を車につんで、わしの供について来る支度にかかれ。そしてまた燕青は、わしに代って、庫の鍵をあずかり、よく家事一切の留守をかたくして欲しいと、縷々、言い渡しを、言い渡した。

「大旦那。いえ、大旦那らしくもない」

と、李固は、第一に反対した。

「どこの風来とも知れぬ、あんな売卜者ずれの言を、そうまで、お気に病むことはございますまい。諺にも『易者の身の上知らず』というではございませんか」

「いや、わしには、べつな発心が生じているのだ。どんな富でも、富は浮雲のようなもの。おちぶれてから後悔しても及ばんからな」

「ですが、ご主人」

と、燕青もまた、黙ってはいられぬように、口をひらいた。