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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

その喉笛にも、彼方の死骸にも、矢が立っていた。秋の深さを告げる黄色い椋や柏の葉が、同時に上からバラバラ降った。

どん! と空から一童子が飛び下りた。いやその紅顔は童子ともみえるが年はもう十八、九の若者で、破れた衣服、鳥の巣のようなあたま、腰には残る一本の矢柄を挿し、手には四川弓(半弓)を持っている。

「ご主人! 燕青ですっ。逃げましょう。燕青の肩につかまってください」

「やっ、おまえは? ……。ああ小乙か。小乙、おまえには、あわせる顔がない」

「な、なにいってるんです、主従の仲で。が、待って下さいよ、二本の矢を抜いて来ますから。……いや先に鎖をお解きしましょう。ちぇッ、この冤罪のご主人をくるしめた首枷め」

と、燕青は満身の力で主人の首カセの鍵を叩き割り、そしてまた、三本の矢をも腰に挿し揃えてから、盧の力なき体を、わが背中に背負い、やがて飛鳥のように峰道、谷道、みるみる、どこへともなく逃げ去ってしまった。

伝単は北京に降り、蒲東一警部は、禁門に見出だされる事

薬草採りの寝小屋らしい。深山幽谷をあるいて仙薬をさがす“薬種掘り”の仲間は、幾十日でも山に入っているという。