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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「とんでもない、まだ瘡口もふさがったばかり、もし再発でもしたら」

と安道全が、たって止めれば、呉用もまた、かたく止めた。

「こんどはひとつ、ご養生かたがた、大寨の留守を願うといたしましょう。獄中の者の生命は、お案じには及びません。関勝の投降いらい、開封東京の蔡大臣は、北京府へたいして、とかく弱腰な指示をとっているようです。おそらく、梁中書もまた、獄の二名を、よう殺しきれますまい。――機会があれば、それを交渉の囮に使うつもりでいましょうから」

それから半月ほど後だった。

「冬が去り、春のはじめ。ここに一案が立ちました」

呉用が、宋江へ、その秘を語った。

「――春となれば、元宵節もまぢかです。北京府では毎年、年にいちどの大賑わい。その夜を期して、城市の内外から、一挙に事を果たそうという計ですが」

さらに、ことこまかな計略の内容を聞き、宋江は手を打ってよろこんだ。規模の大、敵の意表外を突くの策など、すべて兵法の、天の時、地の利、人の妙用などに、かなっている。

ここで所は北京府の公館、管領庁の一殿に移る――。

長官の梁中書は、兵馬総指揮の天王李成、大刀聞達、そのほか、南北の両奉行、以下の役人らを、ずらと目の前において。