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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
なんとも、お見それ申しやして」と、いとも神妙に、三拝九拝して、一献差し上げたいという申しいでなのである。
下地はよし、折ふしの炎暑に、智深も茹ッていたところであるから、一も二もなく、誘いにまかせた。そして彼らについて出て見ると、園の蓄水池の畔り、涼しげな楊柳の木蔭に、莚をのべ、酒壺を備え、籃には肉の料理やら果物を盛って、例の与太もン二、三十が恐れ畏んで待っている。彼らは頭を揃えて、
「へえい。以後は決して、こち徒ら一同、畑荒らしはいたしませんし、ご菜園の御用とならば、どんなことでもいたしますから、どうかひとつ、今後はお手下の耕夫同様におぼしめして」
「えらく今日は行儀がいいなあ。なあに、寺でも食いきれない菜園だ。適度には持ってゆけ、持ってゆけ。その代りちょいちょい、わが輩へのお年貢を忘れるなよ」
智深は遠慮なく飲み大いに食らった。ちんぴらどもは彼の酒量に驚き呆れ、三度も酒屋へ馳けつけた。
「……おや、なんだこれは?」
彼はやっと気がついた。彼の肩や頭へ何か時々、楊柳の上からポトと落ちてくるものがあった。手で撫で廻したのは不覚である。鷺やら烏やら、とにかく鳥の糞にはちがいない。