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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

ところが、一棒はカンと異様な響きを発して宙天に飛び、一棒は腕ぐるみ捻じ曲げられて、とたんに端公二人は大地へ叩きつけられていた。

ここに現われた者は、林冲の難を聞いて、都門開封から後を追ってきた花和尚の魯智深だった。

「さあ、わが輩が追っついたからには、もう、てめえたち邏卒は、召使いも同然だぞ」

智深はそこらの立ち木へ向って、禅杖を振るい、一撃二撃してみせた。およそ、どんな生木も巨象にヘシ折られたように肌を裂いて砕けた。端公二人は、慄えあがって声も出ない。

「師範。情けないお姿になられたなあ」

花和尚は涙もろい。こう労わりつつ、林冲を木の根から解いて、さて。

「……どうする豹子頭(林冲)。おぬしはここで逃げたいか。それとも滄州の流刑地まで曳かれてゆく気か」

「おお花和尚……」と、林冲は再会のよろこびに咽びながら「拙者も男だ。おのれ一人助かってはいられない。逃げれば、東京に在るいとしい妻や舅などに、この大難の身代りをさせるような結果になろう。やはり拙者は刑地にいって、苦役に服すよ」

「そうか。……ぜひもないなあ。ならばせめて、滄州の近くまで、わが輩が送っていこう。