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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

と、二十両ほど、彼に渡し、また傍らの端公たちにも、小粒の銀子を投げ与えて、

「やい、牛頭馬頭」

「へい」

「あしたから、この花和尚がいねえからって、またぞろ師範に酷いまねをしやがると、きかねえぞ。どうせてめえたちも、お役がすめばすぐ開封東京へ帰るンだろう。よくわが輩の顔を覚えておけよ」

「わ、わかり過ぎるほど、わかっておりまする」

翌朝、木賃の軒を出ると、智深はかさねて、林冲に別れをのべ、風のごとく、開封東京の空へ引っ返していった。

その日、一行は滄州の県内に入った。

次の日である。はや何となく、部落も郊外のさまを思わせ、道に見る村娘の姿やら童の群れも、人里くさい賑わいが濃くなっていたが、やがて、村の用水川らしい石橋の附近まで来ると、

「おお、おお。柴家の大旦那が、狩猟からお帰りとみえる」と、そこらの河畔で川魚をとっていた男女も、畑の物を手車に積んでいた百姓も、みな道の端によって、なにやら地頭の行列でも迎えるようなさまだった。

端公の一人が、土地の者に訊いていた。

「そこの石橋の彼方に、豪勢な長者屋敷の門が見えるが、あれが柴家というのかね」

「へえ。おまえさん、柴進さまを知らないのかい。