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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
滄州通いの囚人送りの役人がよ」
「つい、聞いていないが、この界隈で、そんな有名なお人なのかね」
「この界隈だけじゃないよ、柴進はお名だが、通り名は小旋風、貧乏人にはお慈悲ぶかく、浪人無宿者なども、何十人となく、いつも食客として置いているほどでさ。たとえば、お前さんたちみたいな流刑者でも、ご門前へ寄れば、きっと施し物をくださるか、一晩泊めて、労わってやるとか、とにかく、たいそうな侠客大尽さまなのさ」
「ああ、思い出した。それじゃあ、なんでも滄州の近郊には、宋の太祖武徳皇帝のお墨付を伝来の家宝に持っているどえらい名家があると聞いたが」
「それさ。それが今いった、小旋風柴進さまというこの土地の侠客お大尽。……あっ、もうおいでなすった。あのお馬の上のお方がそうだよ」
――見ればなるほど、一団の人馬が、上流の川添い道から下ってくる。
狩猟の帰りとは、ひと目でわかった。大勢の従者のうちには獲物の猪、鹿、尾長鳥などを担っている小者もある。さらに柴進その人は、巻毛の白馬に覆輪の鞍をすえて跨がり、かしらには紗の簇花巾、袍(上着)はむらさき地に花の丸紋、宝石入りの帯、みどり縞の短袴に朱革の馬上靴といういでたち。