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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

――すると。

彼の眼惑いに、ふと鳥影のようなものが、遠くを過ぎッた。すぐ先の、松林の蔭にである。

「あっ? うさんな男が」

楊志は不意に、そこへ向って、こう叫んだ。

謝との問答で、後味わるくきめつけられた破目も、一切のその場の感情も、この一ト声で、消し飛んだ形だった。――楊志にとっては、いい機であったのかもわからない。何を見たのか、途端に、彼の姿はぱッと迅い足を見せて、彼方の松林のうちへ隠れこんだ一個の男の影を追ッかけていた。

松と松との木の間を、野兎のごとく逃げ走ッていった男の影は見失ったが、その代りに、楊志は、思いがけない一トかたまりの旅商人の仲間に出会った。

彼らは、松林の涼やかな平地に陣どッて、桶を載せた七輛の江州車(手押し車)をあちこちに停め、老若七人、胡坐やら、寝転びやら、また木の根や車の梶に腰かけている者など、思い思いな恰好だった。そして何か戯れ口おもしろ気に、この日盛りの汗を拭きあっているものらしい。

「やッ?」

彼らは一せいに跳ね起きた。楊志の姿に、びッくりしたもののようである。

「何者だっ、きさまらは?」

馳け寄りざま、楊志が問うと、