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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

道教をもって、国教とし、自分も教主となって、保護につとめた。全国から木石禽獣の珍奇をあつめ、宮殿の工には、民の塗炭もかえりみもしない。当然、苛税、悪役人の横行、そして貧富の差は、いよいよひどく、苦民の怨嗟は、四方にみちてくる。――時運は徐々におだやかでなく、遼を亡ぼした金(満州族)は、やがて太原、燕京を席捲して、ついに開封城の都にせまり、徽宗皇帝から妃や太子や皇族までを捕虜として北満の荒野に拉し去った。そして、徽宗はそこで、囚人同様な農耕を強いられ、ついに帝王生活の悲惨な生涯を終えるにいたるのである。

徹夜ノ西風ハ破扉ヲ撼シ

蕭条タル孤屋、一燈微カ

家山、首ヲ回ラセバ三千里

月ハ天南ヲ断チテ、雁ノ飛ブ無シ

これは、北満の配所で、徽宗自身が、皇帝たる自身の末路を詠じた一詩だ。

いや、おもわず、これは余りに、先の先をちと語りすぎた。

徽宗の終り、北宋の崩壊などは、ここでは、まだまだ二十五年も後のことである。水滸伝は一名を北宋水滸伝ともいわれるように、徽宗皇帝治下のそうした庶民世間の胎動をえがいた物語なので、前提として、時勢の大河がどんな時点を流れていたか、それだけを知ればよい。