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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「……旦那。……もしえ旦那。うまくお口にあいますかしら」

「オ、梅湯か。ム、たいそう薫りがいい、酢味もちょうどだ。ところで婆さん、梅っていう字は楳とも書く。楳の意味はまた、媒人にも通じるッてね」

「やはり旦那は旦那。味なことを仰っしゃいますこと。婆には学問のことはなにもわかりませんけれどさ」

「文字の講釈などいってるんじゃない。おまえを楳と見立てていったんだ」

「あらいやだ、旦那はいつのまにか、わたしの内職までご存知なんですね。……だって仕様がございませんものね。こんな人通りの少ないところの安茶店じゃ、正直食べても行かれやしません。暇にまかせて、こっそり妾のおとりもち、出逢い茶屋まがいのチョンの間貸し、そんなことでもしてお小費いをいただかないことにゃあ」

「なるほど、看板にはないが、ここは梅湯、生姜湯のほか、和合湯の甘ったるいのもございますッていうわけか」

「旦那へも、その和合湯をトロリと一服おいれいたしましょうか」

「婆さん、さすがだ、おれの渇きは、もう読めたな」

「この年ですよ。そんなことぐらい読めないでどうするもんですか。……けれども旦那え、チョンでも馬鹿でも、亭主ってものが、にらんでいる花ですからね。