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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

女に水心がなければ、怒り出すにきまっている。もしまた、なすがままにさせているようだったら、もう大丈夫、さいごのことへ」と。――つまり西門慶は胸ドキドキそれを実行してみたものなのだ。

が、彼より早く、金蓮の体のほうが、

「……あら、お箸が」

と、すぐ椅子をうごかして、その嬋妍な細腰を曲げかけた。しかし「いや、いいんですよ」とばかり、西門慶もそれより低く身をかがめる。そして彼女の裳の下へ手を触れた。いや、もうそのときは、試すなどの“ためらい”を持っている余裕はない。本来の彼そのものが、爬虫類のような迅さと狡さで彼女のおんなを偸んでいた。「……あ。……アア」と金蓮は柳腰をくねらせたが、叫びを出す風でもない。深く睫毛をとじたまま、白い喉を伸びるだけ伸ばし、後ろへ悶え凭れただけである。それをもう冷然と、西門慶の眼じりは女の小鼻のふくらみから、あらい息づかいまで見すましていた。あらゆる女を経てきた彼の自信は、いまやどうそれを※欲すべきか、愉しもうかと、まずは思案するほどな、ゆとりと狡智なのだった。

金蓮はくるしくなって、椅子から下へ落ちかけた。その体を片手すくいに抱いたまま、西門慶がひたと唇を近づけると、彼女の乾いて火を感じさせるような唇は烈しく男の唇をむさぼり吸った。