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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
……さあ、そこでだ」
彼は、金蓮を引きずッて来て、祭壇の前の菅莚の前にぬかずかせ、自身は手を伸ばして、香炉に香を燻べた。そしてまた、祠りの紙銭へも火をつけたので、女は、せつなに、何か直感したらしい。
「たッ、たすけてえッ」
逃げかけるのを、
「どこへ行く」
武松はむずとひき据える。いや、勢いのまま、仰向けにひっくりかえる。
武松は踏みまたいで、彼女の両手を、両の膝で抑えつけた。そして女の胸を開けはだけた。かの男の西門慶が眼をほそめたであろうふくよかな乳ぶさがむっくりと見えたのもつかのまのこと。武松が逆手にとった短剣は、一声の絶鳴を揚げさせたのみで柄の根際まで突きとおしていた。ぶるんッと女の白い脛が最期の硬直を見せたときは、すでに武松の手には、女の生首がつかみ上げられていたのである。
「兄貴! 見ていなすったか……」
武松は、金蓮の首を、壇に供えた。そしてまたすぐ、従卒にそれを渡して、布ぐるみに包ませ、剣を拭いて、
「みなさん、とんだものをお見せしてすみません。だが、こいつもご近所のご災難と諦めておくんなさい。そして手前はこれから、ちょっとほかへ用達しに出かけますが、その間、さあ小半日とも申しません。