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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
真下をのぞんで、抛り投げた。
足を上に、あたまを下に、文字どおりな、真ッ逆さまが、西門慶の末期の相だったのだ。――これなん、ひとつには怨霊の報い、ふたつには人道のゆるさざるところ、三つには、いうまでもない武松の神力。――どっちにしても、魔園の美果を盗み食らった償いとして、彼のこの横死は、のがれようもないものだったといえようか。
武松はすぐ、金蓮の首をかかえて、おなじ欄から、往来へ跳び下りた。
見れば、西門慶の体は、頭から脳漿を出して伸びている。彼は、短剣を拾って、慶の首を掻き、金蓮の首を併せて、袖ぐるみに横へ持った。――そして往来の群集が、ワイワイと立ち騒ぐ中を、元の紫石街の方へ、風のごとく走り去った。
「……兄さん、どうかこれで成仏しておくんなさい」
あれから瞬時の後。
武松は、亡兄武大の家へもどり、武大の霊前に、男女二つの首を供えて、滂沱とこぼれる涙も拭わず、位牌へ向って言っていた。
「まるで夢のようだった。何から何まで、こいつアみんな約束事かもしれませんや。だがね、兄さん。かたきを取った今日限り、祭壇のおかざり物も、ここの家財も、一切きれいに片づけますよ。