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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
また、やぶれ太鼓や、やぶれ銅鑼を打ち鳴らすので、町中の男女や子供がわいわいと寄りたかり、木驢の上の罪人を目がけて、
「こんどの世には生れ変れ」
「人になるな、馬になれ」
「馬がいやなら豚になれ」
「豚になれなんだら、鼠にしてもらえ」
と口々に謡って、小石をぶつける、わらじを投げつける。誰も止めようとはしないのである。
王婆は、竹矢来の中でも、泣きどおしに泣いて斬られた――時刻もちょうどその頃であった。一方の武松は、奉行所の裏門外で、四十打の“青竹叩き”を背にうけていた。
しかし、刑吏や獄卒までも、彼にはひそかな好意をよせていたので、一つも皮肉を破るような烈しい打ち方はしていない。
が、刺青だけは、庇いようもなかった。また薄鉄の首枷も約束どおりに首の輪へ篏め込まれる。
「じゃあ、出発するとしようか」
流謫の公文を持った小役人二人が、これから遥か孟州の流刑地まで、彼を護送して行くことになる。
奉行所の門を離れると、武松の姿を待っていた人々が、道ばたに堵列していて、みな別れを惜しむふうだった。或る者は、彼に衣服や食物を贈り、或る者は道中の薬などを餞別にくれた。