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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「ちがいます、その長官の妻とはちがいます」
「なぜ違うんですか」
「清風鎮の長官は二名おります。ひとりは武官の長官。――わたしの良人は文官の方です。文長官劉高でございますから」
「ははあ」
宋江はうなずいた。そしてすぐ矮虎へむかい、
「王君」
「へえ。なんですか」
「頼みがあるが肯いてくれないか」
「分ってまさあ。女をおっ放してやれというんでしょうが。……だが、あっしには女房もねえんだ。ここは大目に見ておいてくだせえよ」
「だが、いま訊けば、歴とした文官の細君だろうじゃないか。なにもそんな人泣かせをしないでも」
「いやこの女には、あっしはもう一ト目惚れだ。長官だろうが何だろうが闘ッてやる」
「まアさ、そう強がらなくてもいい。私が頼むのだ。こう頼む」と、宋江が地に膝をついて、王矮虎を拝したので、燕順と白面郎はびっくりして、
「あなたにそんな礼をとらせちゃ勿体ない。どうかお膝をお上げなすッて」
「いやいや、知人花長官の友人の奥さんだ。この難を見捨てることはできない。……なお王君、約束しようじゃないか。そんなにつれあいが欲しいなら、君のためにきっと自分がいまに適当な女を見つけ、嫁入り支度も添えてお世話しよう。