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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「言いたいことがあるなら、両名とも、青州御奉行の慕蓉閣下のお白洲でいえ」
「あいや」
花栄は満身の怒りをこめ、
「片手落ちだ。なぜ劉高には手もくださんのか。慕蓉閣下直々のお調べは大いに望むところだ。しかし、われらばかりをこの縄目とは心得ぬ」
「だまれっ。鎮台の武官たる公職にありながら、密かには、清風山の賊と好誼を通じ、軍を私兵化して、人民の財をしぼり上げるなど、平素のことは残らず慕蓉閣下のお耳にも入っているのだ。――何よりの証拠は、その賊魁の男を見たとたんの貴さまの顔にも現われていた。――それ者どもこの両名を、用意の檻車へすぐ打ち込め」
二輛の囚人車は、すでに営庭の一隅に支度されてあったのだ。そして、せっかくの午餐の卓は、それから後、黄信とその幕僚とまた劉高とが、わが事成れりと、杯を上げあう談笑の座と変っていた。
「オオまだ春先だから日は短い。こうしても居られまいて」
すぐ黄信が立つ、幕僚は出発を部下へ命じる。
いざとの立ち際にも、劉高はそっと一嚢の沙金を袖の下へつかい「諸事、よろしく」と黄信の沓をも拝さんばかりな媚び方、ともに、青州行きの列に従った。――すぐ鼓楽、角笛のうちに官兵の旗は列をととのえ、二輛の檻車を中にくるんで鎮台大門から整々として出て行った。