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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
浅春の陽は白々と薄ら寒い。
すでにしてこの日のたそがれ、護送の官兵は、清風山麓の冬木林へかかっていた。骸骨にも似た梢に烏の大群は何かを待つらしく引ッ切りなしな啼き声をあげている。そのうちに、先頭の兵が、
「オヤ、これで二度見たぜ」
「おれも見た、いやだぜ、おい」
「あっ、また先にいやがる。なんだろ? 林のあッちこッちの蔭から人間の眼が覗いていやがる」
自然、足がにぶり出した。
黄信の直感もまた、そのせつな何かにそそけ立った様子で、
「劉君。何か事が起ったら、君は檻車のそばを離れるな。檻車をたのむぞ」
「はっ」
とはいったが、根が文官育ちの劉高、サッと途端にもうその顔には血の気もない。
はたせるかな、ほどなく林道の彼方に躍り立つ三彩の三獣みたいな人影がある。
一個の男は黒色の袍を着て戦斧をひっ提げ、次の大男は赤地金襴の戦袍に卍頭巾といういでたち。また三番目の野太刀を持ったひょろ長い男は緑衣であった。
「やい、待てっ」
彼らはまるで、戦陣の将軍気取りに、こう名のりを揚げ連ねたものである。
「おれを知らねえか。清風山の頭領、錦毛虎の燕順たあおれのこった」
「おなじく兄弟分の矮脚虎王英」