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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

まず聞き給え。これには深い仔細のあること」

「言い抜けは無用だ、公辺にはもう真相は知れている」

「そもそも、その真相とは、劉高の拵え事です。まったくは」

「問答無用、陳弁ならば公庁で吐ざけ。おれはきさまにお縄を頂戴させるまでのことだ」

「上官と仰いで、一応のことわけを申すに、それすら聞いてくれないのか」

「叛乱人のくせに虫がよすぎる! 縛に服せ、小李広っ」

「なんの! かくなる上は」

広場をえらんで、双方の馬と馬、卍にもつれた。花栄の閃々たる白槍、秦明の風を呼ぶがごとき仙人掌棒、およそ四、五十合の大接戦だったが勝負はつかない。

その間じゅう、敵味方の金鼓と、わあッという喊声は、山こだまを揺り鳴らす。それはすばらしい二人の剣戟俳優の熱烈な演舞をたすける、劇音楽と観衆の熱狂みたいな轟きだった。――そのうちに花栄のほうが、

「これは勝てん」

と、あきらめたか、急に道をかえて逃げ出した。

「卑怯っ」

追ッかけた途端に、秦明のかぶとにカチンと矢が刎ね返り、朱い房が切れて飛んだ。

見れば、花栄はすばやく手槍を鞍わきの了事環(槍挟み)へ預けて、その手には半弓を持ちかえていたのである。