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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
「えっ、じゃあ宋先生は、独りでここから故郷へ帰ってしまったというのか。ちぇっ、なぜ引きとめてくれなかったか」
一同は、ひどく落胆したり恨んだものの、すでに別れ去った人である。今さらどうしようもなく、石勇も隊に加えて、そのまま行旅を続けて行った。
かくて。――すでにその日は、山東梁山泊の近くかと思われる水郷地帯へはいっていた。
すると、蕭々たる平沙や葭の彼方にあたって、一吹の犀笛が聞えたと思うと、たちまち、早鉦や太鼓がけたたましく鳴りひびいた。
見れば、野山いちめんに、翩翻たる黄旗、青旗、紅旗がのぞまれ、遠い岸の蔭から、二そうの快舟が、それぞれ四、五十人の剣戟を載せて、颯々とこなたへ向って近づいてくる。
「やあいっ、待てーえっ」
舳から呼ばわったのは、梁山泊の一将、豹子頭の林冲、もうひとりは赤髪鬼の劉唐だった。
こなたでは、花栄やら秦明たち。
「おうっ梁山泊の一手の衆か、おまちがえ下さるな、官軍の旗は、道中の眼をあざむくための物。われらは官軍ではござらん」
「では、どこの何者だ」
「宋公明どのの添え状を持参しておりますれば、それをご一見ねがいたい」
「なに、宋先生の手紙をお持ちだと?」