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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

……いまいるのは趙能、趙得という兄弟の与力同心でな」

なんと、宋江がこう聞いてから、まだ半日のくつろぎも、故郷の家でめぐまれていないうちだった。

その趙能、趙得、兄弟の役人がはやくも知って、宋家の外塀を捕手でぐるりと取り囲み、

「神妙に同行あるか。それとも、一せいに踏み込もうか」

と、威嚇をふくめて言い入れてきた。

「もう知って来たか」

老父は慟哭した。

けれど宋江は、父の無事を見たことだけでも、うれしかった。だのにここで、冷静を欠けば、老躯の父により以上な心労をまたかけ直すことになる。むしろはやく刑をすまして、はれて家に帰り、せめて老後の父の余生を見るに如くはないと考えられた。

そう聞いて、老父はいよいよ涙にくれたが、

「ぜひもない、おまえがそう腹をきめてくれるなら、わしも金をおしまず官途へつかって、すこしでも罪がかるく、また早く帰ってもらえるように、それをたのしみに、待つとしよう」

この相談には、趙も立会わせた。そして充分な馳走とわいろの力で、趙の手勢は、一ト晩、張り込みを名目として泊りこみ、宋江の逮捕はあくる日にのばされた。

県城の知事は、事件当時のままで、すなわち時文彬その人だった。