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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

「これでわしの職分も立った」

知事は、ただちに宋江の口書をとり、牢舎へさげた。――が、街中はその噂でたちまちに、

「なにとぞ、宋押司さんのおゆるしを」

「どうぞ、押司さまには、おもい罪となりませぬように」

との嘆願運動がまき起った。

すでに、宋江が過って殺した女の母親の閻婆は、半年まえに病死していたし、女の情夫の張文遠も、役署のすみにはいたが、街中の反感のなかを、いまさら敵役になって出る勇気もない。

かつ奉行所内には、宋江の同情者がたくさんいたので、それに宋家の老父からも金もたっぷりまわっていたので、事々軽くすまされ、恩赦の名の下に流刑地としてはもっとも軽い者がやられる“江州流し”と判決された。

また、彼の流される日には、町民ほとんどが、涙をもって彼を見送り、彼の老父と弟の宋清は、すでに人も絶えた県外の途上で、ゆっくり別れを惜しむこともゆるされた。

老父は言った。

「江州は、米どころ、魚もとれ、気候もよい。気をゆたかに、刑期をしんぼうしてくれい。折をみて、弟を見舞いにやろうし、小費いも届けようぞ。ただ江州への道すじには、いやでも梁山泊の近くを通らにゃならぬ。