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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

一清が羨ましいや。先生が羨ましいんだ。……なんとか、おれのおふくろも、梁山泊へ連れて来て、ちったあ、楽をさせてやりてえもんだと。……つい、それを考えたら、泣けてきて、泣けてきて」

「じゃあ、おまえも故郷へ帰って、母親をここへ連れて来たいというのか」

「先生、何とかしておくんなさいよ。後生だ……こ、このとおりお願いですから」

「さあ?」

宋江は当惑した。同情の念、禁じえぬものはあったが、周囲すべての面は、不賛成の色をたたえている。目と目で顔を振りあっている。

それも無理ではないのだ。何ぶんにも、黒旋風李逵の名は、その暴勇の聞えは、江湖に高い。

ことに“江州大騒擾事件”のあとでもあるから、故郷へも、官の手が廻っているにきまっている。そんな所へ、こんな男を、と誰にしろ危ながるのは当然だった。

だが、言いだしたらきかない李逵だ。ついそれを訊いたほうが悪いようなものである。李逵は墨をなすッたような涙を顔じゅうにこすッて、果ては宋江へ食ってかかった。

「いけねえンですか先生。あっしは人間の子じゃねえんだろうか。べら棒め。先生の親や弟は一つにいるくせによ。なぜ俺だけには……」