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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页
さて、そのあとではすぐ、
「誰を、奴さんの用心に尾行てやったらいいか」と、なった。
杜選が言った。「――それはここの対岸で、見張り役の酒店をやっている朱貴の兄哥にこした者はありません。朱貴も沂水県の生れで、李逵とは同じ在所の出ですからね」
「いかにも」
と、宋江はうなずいた。
「そうだ、そんなはなしは、いつか潯陽江の白龍廟でも耳にしたことがある。誰か、速舟で朱貴を呼んで来てくれまいか」
朱貴はすぐやって来た。そして命じられた使命にも否やはなく、こう呑みこんで、なお言った。
「現に、てまえの弟の朱富は、いまでも沂水県の西門外で、居酒屋をやってますし、李逵の田舎の百丈村とは、たいして離れてもおりません。……へい、李逵の家ですか。左様、たしかにおりましたよ盲の老婆が。よく縁先の日なたで糸を紡ぐ小車を廻していましたが、それが李逵のおふくろでしょう。盲の世話には、一人の息子がおりましてね、ええ、李逵の実の兄なんで。……なにしろひどい貧乏百姓でしたから、今でもそれに変りはありますまい」
「なにしろ頼む」と、宋江はくれぐれ朱貴に嘱した。「よもやわしとの約束は破るまいが、なにせい、あの奴さん、なにを仕出来すかわからんからな」