轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

……じゃあここを動かず待ってなせえよ」

星明りをたよりに、彼は谷川の水音を心あてに降りて行った。谷底は地殻の割れ目みたいな乱岩大石の状をなし、走り流れる奔湍の凄さは、たちまち、夏を忘れさせる。

一石につかまって身を逆しまにし、彼はまず、がぼ……と心ゆくまでそこの谷水を飲んでから、

「ああ、美味え。氷のようだ」

と、腰の竹筒へも汲み入れた。そしてもとの絶壁を、蔦に攀じ、岩にすがり、一歩一歩登りつめて、以前の青石のところへ戻って来てみると、はて、どうしたのか? 老母の破れ沓と杖はあったが、老母の姿はどこにも見えないではないか。またさらに、呼べど叫べど、谺ばかりで母親のこたえはない。

「や、や、や。血がこぼれている?」

李逵は総毛立った。泣きそうになった。

「おっかあ。……おっかあ!」

血しおのあとを辿って、くるくる、地面をあるき巡った。どこまでも、その血まなこを、さまよいつづけた。

するうちに、大きな洞穴があった。前に草原をひかえた台地の蔭である。見ると二匹の虎の子が、人間の片足をしゃぶっていた。猫がまたたびを持ったようにジャレ戯れながら舐り食らっている様子なのだ。